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「患者さんのための医療をするにはどんな医師を育てればいいのか。」豊見城中央病院が大切にする教育スピリッツ

医学生による医師インタビューシリーズ。今回は、研修医からの人気も高い豊見城中央病院(沖縄県豊見城市)を取材しました。当日は初期研修医向けの外傷トレーニングが行われており見学させていただきました。


見学後、この研修を指導する嵩下 英次郎先生にお話を伺いました。

大学の医局を出て沖縄へ、その後海外経験を経て再び沖縄で外科医として働きながら若手医師・研修医の指導にあたる


ーー(学生)先生の経歴と豊見城中央病院に入職された経緯についてお聞かせください。

 産業医科大学で医学を学んだ後、沖縄県立中部病院で研修をし、そのままそこで働きました。
 沖縄県立中部病院は、もともとハワイ大学の先生たちが教えていた病院ということもあり、アメリカに留学をしてそこで専門医を取得した先生が多くいました。その影響もあって、私も北米で学びたいと思いクリニカル・フェローとしてトロントに2年間留学しました。


 留学後は沖縄に戻り働き、長崎の病院に救急の立ち上げを手伝った後、この豊見城中央病院で働くことになりました。豊見城中央病院でアキュートケアサージャリー(外傷外科、救急外科、外科的集中治療の3つの領域を担当する新たな診療概念)を取り入れるということで、前院長が沖縄県立中部病院の先輩だったことがきっかけです。


 現在は外科医として手術を執刀しながら、若手医師や研修医の指導を行っています。


ーー(学生)留学に必要な英語はどのように勉強されましたか。

 学生の時にはテクニカルタームは全部英語で覚えるようにしていました。本気で英語の勉強を始めたのは、ある程度自分の時間の管理ができるようになった医師7年目ぐらいからです。


 朝の4時に起きて、USMLEの問題を解いて、7時半ぐらいに病院行き、そこから20時~21時ぐらいまで働いて帰り、早く寝て翌朝早く起きて勉強する、ということをしていました。さすがに当直明けは勉強できませんでした(笑)。


ーー(学生)トロントで働かれていた時に「日本との違い」を何か感じましたか。

  臨床に関しては、やっていることは日本と違いはありませんでした。しかし海外で勉強になったことはたくさんありました。


 勤務先が北米の中でも大きな病院の一つだったこともあり、そこではさまざまな臨床研究が行われていました。その研究における分析手法などは勉強になりました。また、有名な先生(自分が持っている本を書いた人)本人が目の前で講義をしてくれることもありました。


 症例数は日本と比べて圧倒的に多く、例えば、1年間に私が執刀した肺がんは300症例ぐらいになりますし、ある有名な心臓外科医は年間2000例を執刀していました。どうしたらそんなに合理的にできるのか、そこもとても勉強になりました。


 また海外に行くと、自分の存在意義をもう一度見直すチャンスにもなります。自分がいなくても普通に病院は動いており、自分がいかに働かせてもらっているのかを再認識することができます。人間的にも成長できるのでそういう意味でも留学はしてよかったと思います。

外科医は「違い」が分かることが重要


ーー(学生)外科医として成長するには何が必要でしょうか。

 症例数はやはり必要ですが、「違い」が分かることが重要だと思います。


 それは何かというと、同じ手術でもこの先生の手術とこの先生の手術は何が違うのかが分かるということや、手術で患者さんのお腹を開けたり、胸を開けたりしたときにいつもと何が違うのか、「この患者さん何か今日違うぞ。」ということが分かることが必要です。


 外科医が成長するには他の科よりも時間がかかるので、根気も必要になってきます。


ーー(学生)先生が医師になった時にはどんなことを意識されていましたか。また今はどんなことにやりがいを感じますか。

 私は、好きなことやれる医者になりたいと思ったので大学の医局を出ました。その当時は大学の医局にほとんど残る時代だったので、ある意味変わり者だったかもしれません。


 大学を抜けると大学からのサポートはなくなります。なので自分自信で自分の道を切り開いていかないといけません。その厳しさはあります。ですので、人に負けないように経験を多く積み、手術の腕を磨いたり、同じ手術でも短時間で終わらして合併症が起きないようにしたり、そういうことを意識していました。


 現在は、今までの経験からその当時自分が先輩に教えておいてもらいたかったことを集めて研修医の先生にフィードバックしています。27年間蓄積してきた情報です。そうやって教えることで若い医師が育っていくことを見ることが自分のことよりも一番嬉しく感じていて、やりがいのある仕事だと思っています。


より実践的なシミュレーショントレーニングを取り入れ、緊急時にも対応できる医師を育てたい

ーー(学生)先程、研修医の先生方に研修をしているところを見学させていただきました。すごく実践的だなという印象なのですが、この病院の研修の特徴について教えていただけますか。

 今日見学していただいた研修は外傷研修の2回目になります。


 当院の研修では、他ではあまり実施していないような研修を取り入れています。例えば、豚の胸壁を使用した胸腔チューブを入れる練習や、豚の喉頭を使用した緊急気管切開の練習などです。
 このようなトレーニングをする理由は、研修医の先生には医師として緊急時にでも対応できる能力を身に付けてほしいからです。

「呼吸状態がおかしいです、何をしますか。」
「吸引をします。」    
「サチュレーションを確認すると悪化していますどうしますか。」
「挿管します。」
「挿管できません。どうしますか。」


このようにたくさんのシナリオを用意して実習を行います。


 まず一通りの流れを研修医の先生に教えます、その後にグループに分かれて一人ずつ様々なシナリオで処置を行います。自分の番以外は他のメンバーがしていることを何回も見ることになるので、自然と流れが頭の中に入っていきます。


 今日の実習では1年生を2年生が教えました。これは2年生にとっても重要で、1年前に自分達が学んだことを後輩に教えることで、本当の勉強になります。そして、1年間実際に経験してきた中で1年前に知っておいた方がよかったことなどを後輩に伝えるます。


 今までの研修では、見逃したら恐い疾患などをスライドで用意して講義をしていました。しかし今後はこのようなシミュレーショントレーニングに移行して研修医の先生が実践で一番役に立つ研修をしていきたいと思っています。今年はほとんどシミュレーショントレーニングになるかもしれません。


ーー(学生)豊見城中央病院で研修を行う魅力はどんなところでしょうか。

これは沖縄県全体の特徴かもしれませんが、研修医にはきちんと教えなきゃいけないという文化になっており、研修医を大切にします。


 沖縄県は、もともとハワイ大学が医療を教えていました。アメリカの医療の考え方は「誰のための医療なのか。」というところから始まります。誰のための医療かというと、それは「患者さんのための医療」です。そういう考え方があるので、研修においても、「患者さんのための医療をするにはどんな医師を育てればいいのか。」というところが前提にあります。


 当院は病床数も378床ですので大きすぎず、横の繋がりもとても密で、全ての科が協力して研修医を育てています。


 今朝も形成外科の先生が研修医のために、こういう傷の場合は形成外科ではどう処置するかをレクチャーしていました。それを研修医だけでなく、内科の先生もやってきて一緒に聞いていました。こういう風景はよく目にします。


 すべての科が研修医を一生懸命育て、一生懸命教えます。そういうスピリッツが当院には浸透しているので、研修に来て頂ければそういうところを魅力に感じていただけるはずです。



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