catch-img

小児科医が伝えたいこと「お母さん、もっと楽しよう。」


 ワンオペ育児、保育園落ちた日本死ね・・・日本の子育ての未来は明るくない。


合計特殊出生率はなんとか下がりどまったとはいえ、所詮は2未満。単純計算しても、2人の夫婦が2人の子どもを産んでやっと人口はとんとんになるのに、このままでは本気で日本人が滅びるんじゃないかと思う。


 一方で、虐待や乳児遺棄のニュースも絶えない。もちろん赤子の命を奪うという行為は許されたものではないが、そこに至った加害者(切ないことに、一番多いのは実母)の気持ちに思いをはせると、ぐっと切なくなるものがある。


 育児に携わったことがある人なら誰しもわかると思うが、どんなに子どもが可愛くとも、イライラしたり、思わず手を上げてしまったりしそうになる瞬間はいくらでもある。私も出産・育児の経験を経てはじめて、あぁこのお母さんも毎日ワンオペで限界だったのかな、誰にもヘルプが出せなかったのかな、などと考えるようになった。


 日々の診察のなかでも、別に虐待まではしていないとは思うが、ちょっとこのお母さんギリギリだな、と思うことは多々ある。小児科医の自分としては、日々子育てに奮闘しているお母さんに、少しでも楽をしてほしいと思う。


今回は、正しく手を抜く育児に役立つ3冊の本を紹介する。

外来で一番「もっと楽していいよ!」のは、離乳食がらみのこと。

「どんなに頑張って作っても、全然食べてくれないんです。」

「食事の時間に、まず椅子に座ってくれません。床に全部落とします。」

・・・わかるよお母さん、わかります。椅子に座ってあーん、って笑顔でしてる写真なんて、嘘ですわ。なかには厚生労働省のホームページを見て、すべての食材は、何gか絶対測って作ってます、ってお母さんもいて、ビックリたまげる。


もちろん子どもにとって、どれくらいの食事量や味付け、食材が良いのかなど、ある程度把握しておくことは大事だが、毎回そんなに気張ってやって、さらに子どもが食べてくれないとなると、イライラしないお母さんのほうがおかしい。で、食事のときはお母さんがイライラしている、ってなると子どもも食べない、の悪循環。

 
 自慢じゃないが、私はほとんど離乳食は作らなかった・・・というか生後3か月から仕事復帰して、米や野菜をすり鉢でゴリゴリするような時間は取れなかったというのが事実である。

もちろん3大アレルゲンの卵・小麦・乳については、たとえば15分しっかり固ゆで卵を作って、すぐ黄身と白身を分解して、黄身を耳かき一杯から・・・とやってみた。幸いアレルギーがないとわかったので、あとは全部、和光堂(+保育園の給食)にお世話になった。私が当直や祝日勤務で不在のときに、パパも気軽に子どもにあげられて、助かったことこのうえなかった。


別に自分が手間暇かけて作ったわけでもないのに、吐き出されたり床に投げ出さたりすると、イライラしていた私。これが、何時間も出汁から作り込んで・・・の手作りだと、発狂しそう、それこそ虐待しかねないなと思った。


がんがんレトルト使ってください、ってもっとお母さんたちに広められないかな・・・と思っていたら今年の1月にまさに!の本が出た。

「小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです」(工藤紀子・著)




2児の母である工藤先生も、最初のお子さんのときは必死で作って奮闘していたらしい。が2人目のお子さんのときに海外で育児をした際に、離乳食って買えばいいんじゃん!と目からウロコだったよう。


もちろん、手作りを否定しているわけではないが、手作りでは管理が難しい栄養や衛生面、なにより作っている時間を子どもとの時間に避ける、という観点から、作らなくても良いことを推奨している


日本のレトルト離乳食では不足しがちな鉄などについては、別途補完が必要だったり、海外のレトルト離乳食を推奨していたりと、今の日本のママたちからするとかなり斬新な内容ばかりだろう。一人でも多くのママたちにこの本を読んで、自信をもってレトルト離乳食を買いに行ってほしいし、少しでも離乳食にまつわるイライラが改善して、親子ともに食事が楽しい時間になってほしい。

母乳がらみの悩みには


 離乳食の前に、子どもが口にするのはおっぱい。母乳がらみの悩みや相談も、まぁとても多い。「おっぱいが全然張らないから、なんかおっぱいが出てる気がしなくて・・・。」「食事にすごい気をつけてるのに、おっぱいが足りないみたいで、赤ちゃんの体重が増えていなくて、ショックだった。」「3時間おきにって言うけど、無理やり起こさなきゃいけないんですか。」などなど。  
そんなお母さんたちにこれです。

「ちょっと理系な育児」(牧野すみれ・著)。


理系女子である著者が、独自にWHOの授乳ガイドラインを和訳、ブログにアップしていたものが、著作としてまとめられたものである。乳腺炎の原因になる食事、というのは医学的に証明されたものはないこと。おっぱいが張らない=おっぱいが足りてない、ではないこと。論文に基づいた事実をわかりやすく解説している。私も一人目出産後、すでに保育園に預けることが決まり、母乳も徐々にやめていく中でこの本に出会い、あーもう少し早く読んどきゃ良かった!と思った感動の本だった。


こと出産や授乳においては、お母さんたちが最も触れ合うのは助産師。ただ私も実感したのだが、言うことがみんな一人ひとり違って、何を信じて良いのかわからなくなる。ある助産師は、「3時間おきにとにかく起こして飲ませてね。」と言うし、ある助産師は、「体重が増えてるならしっかり寝るのも大事だから無理に起こさなくても大丈夫。」と。食事の内容についても、助産師によって言うことがバラバラ。


もちろん、ひとりひとりのお産や母乳を見てきてわかる、経験則のようなものは、一意見として尊重すべきではある。ただあくまでそれは経験則であり、万人に「これじゃなきゃだめ」と強制することがあってはいけない。


ケーキをいくら食べても乳腺炎にならない人はならないし、逆に食べなくても分泌過多などで体質的にすぐ乳腺炎になってしまう人もいる。医学的・科学的にはこうですよ、経験上はこういう人もいますよ、などと、うまく双方をからめてお母さんたちに情報を提供できる助産師が増えると良いと思う。母乳育児でもミルク育児でも、授乳はお母さんと子どもの大切なふれあい時間。少しでもストレスフリーに過ごせる家族が増えることを願う。

最後は睡眠。


「夜いまだに2-3時間おきに起きるんですけど、いつになったら夜通し寝てくれますか。」という1歳のお母さん。「添い乳じゃないと寝られなくなっちゃって、もうすぐ仕事復帰して断乳もしなきゃいけないのに、どうしよう。」「ひたすら泣かせておけばいつか寝るかなと思うけど、近所から虐待と思われないか心配。」などなど、外来では睡眠に関する質問もかなり多い。


世の中のママたち皆に読んでほしい、とまで思うのが、こちら。

「ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド」(愛波文・著)。



日本人としてはじめて、IMPI/IPHI妊婦と子どもの睡眠コンサルタント(アメリカの民間資格)を取得した著者が、睡眠のイロハを解説している。このコンサルタントの資格取得にあたっては、科学的根拠にもとづく情報を勉強する必要がある。「1歳の子に必要な睡眠時間は?」「子どもにとって昼寝がなぜ必要?」「昼寝をしなければ夜寝るって本当?」「睡眠のトレーニングをすることは、親子の愛着形成に問題はない?」「結局どんなタイムスケジュールで1日過ごしてあげるのが、子どもにはいいの?」こんな疑問に答えてくれる。


私自身は、一人目が生後8か月くらいに、この資格の勉強をはじめ、1年位かけて取得した。幸いよく寝てくれる子であったが、外来でお母さんたちの質問に、科学的根拠をもって答えたいと思っていた中、最適な資格だった。睡眠不足は、親子にとってマイナスでしかない。夜泣きや睡眠不足について、正しく知ることで恐れをなくし、結果として少しでも多くのママと子ども達が寝られることで、みんなでハッピーになってほしい、と思う。



 こと育児に関しては、ネットに様々な情報があふれるが、医学的根拠に基づいたものは多くなく、ワンオペ育児におわれるお母さんたちを、さらに追い詰めている事が多い。正しく知って、正しく手を抜く育児。これからも一小児科医として推奨していきたいし、お母さんたちもこれらの本を読んでぜひ実践してほしいと思う。

さよママ

さよママ

小児科医。 総合病院にて初期・後期研修を修了。 現在、第二子出産後の産・育休中。 IMPI妊婦と子どもの睡眠コンサルタント。

関連記事